一生できる仕事を求めて。高知県本山町での林業に辿り着いた川端俊雄さんの移住物語

2025年4月。

60歳から65歳への定年延長が、すべての企業に義務されます

そんな時代に、一生できる仕事を求め、異業種である「林業」の世界へ飛び込んだ40歳の男性がいます。

なぜ林業を選んだのでしょうか?

今回は林業を一生の仕事として選び、本山町で活動をしている、川端俊雄さんにインタビューをしてきました!

「林業に興味がある!」

「田舎での仕事がどんなのがあるのか知りたい」

という方はぜひご覧ください!

一度経験した林業が忘れられなかった

川端 俊雄(かわばた としお)さんのプロフィール

1973年生まれ。2013年に本山町地域おこし協力隊の林業振興活動員への着任をきっかけに移住。退任後は、地域おこし協力隊の仲間と一緒に「山番LLP」を立ち上げ、自伐型林業に取り組む。2020年秋からは奥さんと一緒に「ヤドリギ」という屋号で、夫婦林業を営む。

—今は林業をナリワイとされているとのことですが、前職は何をされていたのでしょうか?

塗装業一人親方でやっていました。

塗装業といっても、ちょっと変わった仕事内容で、エイジング塗装といわれるもので、新しく作ったものを、いろいろな状況設定に応じて、経年変化したように表現する仕事壁画を描くなどの仕事をしていました。

—そのお仕事はどのくらいされていたのですか?

途中、違う仕事をしていた期間もありますが、20代後半くらいから本山町に移住する40歳手前まで、15年ほどやっていました。

—そこから林業に転職されたということですが、きっかけはなんだったのでしょうか?

前職の現場が主にテーマパークやアパレル店舗だったので、仕事ができる時間がそれらの施設がしまっている夜間となるため、ほとんどが夜勤でした。

—それはしんどいですね…。

40歳手前になり夜勤を一生続けていくことに、不安を感じることがあったときに、ふと以前に経験した山仕事を一生の仕事にということが頭に浮かびました。

過酷な仕事だけど、自然の中で働く心地よさ

—山仕事を経験されたことがあったんですね。それはどこで経験されたのでしょうか?

一時期、大阪を離れ移住していた奄美大島で、マツクイムシの駆除のバイトをやっていたことがあったんです。

—マツクイムシの駆除のバイト!どんな仕事か想像がつきません…!

親方をはじめとする4、5人のチームで、チェーンソーやいろんな道具を分担して持って、遠くの山にみえる松がれに向かって、道無き道を進む

なかなか過酷なバイトでした。

しかしながら、林業を一生の仕事にと思われたのはなぜだったのでしょう…?

その山仕事のバイトは体力的にかなりきついものでしたが、山の中で働く気持ち良さがよみがえり、山仕事だったら夜勤もないというのが、単純なきっかけでした。

地域おこし協力隊として林業をはじめた理由

川端さんがお子さんのために作った遊び場/川端俊雄さんFacebookより

その後、高知県へ移住し林業をはじめられたということですが、移住の決め手はなんでしたか?

昔から、旅行が好きで前職の現場の合間にも、車で沖縄にも行ったりしたことがあり、その隠れた目的として、移住地の候補を探していました

その中で、通りがかった高知県、中でも本山町には公民館で宿泊したりと、地域の人の温かさにも触れ、とてもいい印象を持っていました。

—移住後は地域おこし協力隊として活動されていたということですが、なぜその道を選ばれたのでしょうか?

林業をやりたいと考えていた当時、森林組合に入るくらいしか情報がない中で、高知県を含めた、全国の林業の求人を探していました。

当時はまだ県外に求人を出すようなところはほぼなく、いろいろ調べた結果、引っかかったのが高知県の移住促進フェアでした。

その中で、林業に就きたいと相談したところ、紹介されたのが本山町地域おこし協力隊の林業振興活動員の枠で、率直に言うと、他に選択肢がなく飛びついた感じでした。

—勢いは大事ですね(笑)

選択肢がなかったというマイナスなイメージですが、結果的には本山町で本当によかったと感じています。

本山町地域おこし協力隊としての活動

地域おこし協力隊として入った現場/川端俊雄さんFacebookより

—それでは地域おこし協力隊時代の活動内容を教えてください。

最長3の任期中に、資格の取得地域の事業者での研修などを受けて、最終的に地域での起業と定住を目的とした活動をしました。

—具体的にどのようなことをされてきたのでしょうか?

資格取得や事業体での現場研修以外にも、自分たちで山主さんと直接契約して、一から現場をおさめ、経営的に本当に成り立つのかという検証をする機会もありました。

—それはとてもいい仕組みですね。他にも一緒にやっていたメンバーがいたのですか?

林業振興活動員の枠は2名で、同期はもう1名いました。他にも、協力隊卒業者の中で林業を副業の一つにしたいと考えている仲間もいました。

地域おこし協力隊卒業のその後

川端さん愛用のチェーンソー/川端俊雄さんFacebookより

—3年間、協力隊として活動したのち、その後はどのように生計を成り立たせておられますか?

卒業後は、人手の足りない森林組合への就職も勧められましたが、協力隊期間中に目指していた起業をすることにしました。

—具体的にどのような形で起業されたのでしょうか?

LLP(有限責任事業組合)という個人事業主の集まりの団体3名で立ち上げ、山主さんから依頼を受けて、間伐をしたり、森林組合の請負で作業をしたりしました。

団体設立時に話し合った結果、伐り旬といわれる間伐に適した期間のみ、林業をすることとし、それ以外はメンバーそれぞれさまざまな副業を組み合わせる形でなりわいとしていました。

林業現場での一枚/川端俊雄さんFacebookより

—過去形ということは、今は別の業態なのですか?

基本的にそのスタイルは変わっていませんが、団体からは独立し、今は妻と2人で仲睦まじくやっています

林業は未来を見据えて行動する仕事

妻・セイカさんとの2ショット/「ヤドリギ公式サイト」より引用

—奥さんと!素敵ですね。協力隊でよかったなと感じることを教えてください。

そもそも素人が林業で起業するのは簡単ではありません

資格の取得や県内外問わず、いろいろなところに研修に行ったりする機会を得ることができるところが、協力隊を経て、林業を始めるいちばんの強みであると思います。

—なるほど。すごく参考になります。それでは最後に同じように林業分野の地域おこし協力隊になりたい方に何か一言お願いします!

林業と一口に言っても、規模の大小や施業の方法などいろいろな形があります。

私は「様々な形態に良いも悪いもない」と考えており、いろんな形の林業があることが大切だと思っています。

しかし、大事なのは形式よりも「自分はどういった山を次世代に残したいのか?」という想いであると思います。

林業に限ったことではありませんが、担い手が本当に足りていないということが、地域で働く自分たちにも実感できるほどなので、どんどん参入してほしいなと思います。

—そうですね。最近のアウトドアブームやウッドショックなどのニュースで森林に目を向ける方も増えていると思うので、林業をしたい方にこのメッセージが届けばいいなと思います。今回は貴重なお話、ありがとうございました!

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