大学に進学。卒業後の進路として、あなたならどんな道を考えますか?
就活して企業に就職。公務員試験を受験。大学院へ進み研究。などの意見が出てきそうですが、今回は少し珍しい進路を選択した若者の話です。
「やりたいことは林業の現場で働くことだった」と目を輝かせながら語るのは、高知県本山町在住の立川真悟さん。
立川さんは、東京農工大学を卒業後、「日本の山の未来を本気で考える」という信念のもと、新卒で林業に従事し、本山町に移住しました。
今回はそんな、立川さんに突撃インタビュー!
「どんなキッカケで林業に興味を持ったのか?」
「新卒で田舎暮らしってどんな感じ?」
「なぜ本山町を選んだのか?」
など、リアルな声を聞いてきました!!
新卒、23歳で本山町へ移住
立川 真悟さん(たちかわ しんごさん)
1994年、高知市出身。小学生のころから自然が大好き。東京農工大学の地域生態システム学科、森林科学卒。新卒で、本山町地域おこし協力隊の林業振興活動として3年間、林業のスキル取得をしたのち、現在は本山町役場の林業専門職員として勤務中。副業として今も林業現場へ出向いている。愛称は「おいしんご」。
林業をはじめるまで。森が好きになった理由
ーーー森が好きで、大学もそういったことを学んでいたそうですが、具体的にどんなことを学ばれていたのでしょうか?
大学では「森林科学」という学問を専攻していました。
具体的には、森の中の生態系を学んだり調べたり、林業機械の種類や林業の仕事の仕方など一般的な林業知識を学びました。
それに付随して、土砂崩れはなぜ起きるのかという治山や砂防についても学びました。
ほかにも、測量をして図面を作ったり、苗木の植え付け、林業機械の操作体験、のこぎりで間伐体験など、演習林で実習もありました。
ーーーおもしろいですね…!
大学では幅広いことを学んだのですが、中でもおもしろかったのは、葉っぱを200種類、ズラーっと並べて、それらの名前を覚えたことです。
その時に必死になって覚えたので、今でもそのおかげで木の種類がある程度、わかるようになりました。
ーーー森や自然が好きになったのは、なにか原体験があったのですか?
小学校3,4年生のときに、学校の先生が環境教育に力を入れていて、総合学習の授業の時に、地元である「高知の森林」についても教えてもらいました。
実際に山に行くこともあり、3年生では工石山(※)、4年生では甫喜ヶ峰(※)へも行きました。
※いずれも高知県の山の名称。
さらに5年生になると、アメリカ・コネチカット州へ1週間、連れて行ってもらえる機会に恵まれ、そこでは「こども環境サミット」というイベントに参加しました。
ーーーすごいですね!その頃にアメリカでそのような活動に参加することで、刺激も受けそうですね。
その通りで、小学校時代の先生の影響で、自然に興味を持つようになりました。
それは本当に自然な流れで、気がつけば自然が好きになっていました。
「移住」はあくまでも手段。林業がやりたかった
ーーーそこから林業という道へ進まれることになるわけですが、移住先として本山町を選んだ理由は?
実は「移住先」を探していたわけではなかったんですよね。
大学1年生のときに四万十で林業をされている方々と知り合う機会があり、そこで「自伐型林業(※)」という言葉を知りました。
※採算性と環境保全を両立する持続的な森林経営のこと
今では一般的になりつつありますが、その当時は「自伐型林業推進協議会」も(以下「自伐協」)まだ設立されていないときでした。
大学2年生の時に、自伐協が設立され、シンポジウムなどのイベントも開催されていたので、そういったものには率先して参加をして、まさに追っかけのようなことをしていましたね(笑)
若手林業家の集まりが東京・青梅でもあったんですが、そのときに今もつながりのあるいろんな林業家の方に知り合い、本山町の方もいたのですが「また遊びにおいでや」との声かけをしてもらい、それが今につながっています。
ーーー「林業」というのが入り口だったわけですね。その後、本山町へはどうやって住むことになったのでしょうか。
地元が高知市なので、最終的には地元に…という想いはありました。
ですが、大学卒業後の進路として、高知県以外も視野にいれて考えていたんです。
他県のNPOや森林組合や事業体なども考えていましたが、ちょうどタイミングがいいところに、本山町の地域おこし協力隊の林業振興活動の募集枠があり、いろいろな方々とのご縁も重なって、応募することにしました。
ーーー移住前の目的が明確だったからこそ、決意できたことですよね。林業について学んできたから、やはり現場で働きたかったのでしょうか?
そうですね。
林業を実際にやってみたいという気持ちは在学中からあり、実際に体験のようなことはしましたが、もっとがっつり林業に携わってみたいと思っていました。
大学で林業について学んだけど、自分は林業のことを全然わかっていないのでは?という感覚が強くあったので、卒業後は現場へという強い気持ちがありましたね。
実際に現場に出てみるとその感覚は間違ってなかったなと思います。
大学での学び重要性もすごく感じていますが、一方で現場で働いてはじめて林業のリアルを肌で感じることができたなとも思っています。
住んでみて感じる、田舎のメリット・デメリット
ーーー実際に本山町に移住してみて、どう感じていますか?
本山町へは引越しをするまでは来たこともなく、場所すらもどこやろう…と思っていたくらいでした。
他のエリアだと移住者と地元の方の間に壁のようなものを感じますが、ここの地域は先輩移住者や地域おこし協力隊のOB,OGの方も多いので、とても入りやすく、地域の方の理解もあると感じています。
ーーー逆に移住してから苦労したことや大変だと感じることはありますか?
田舎特有の人間関係でしょうか。
やはり人と人との距離が近い分、ちょっと苦手だなと思った人との距離感を保つのが難しいなと感じることがあります。
どうしても関わらざるを得ないシチュエーションもあるので、苦労することもありますね。
ーーー確かに人間関係が近い分、親しい関係性にはなれるけど逆もしかりですよね。それでは最後に移住を考えている方に一言お願いします!
僕自身、ここに暮らし始めて、一人ひとりの存在感がとても大きいなと感じるんですよね。
なので、都市部にいるよりも、自分自身の存在感が大きくなるようなイメージ。
「この分野では、この人がいないと成り立たない…」という場面が結構あって、自分の得意なことと地域のニーズが一致することも多いです。
町が小さい分、行政と住民の距離感も近いし、自分の持つ強みをうまく活かせれば、仕事には困らないと思います。
もちろんそのためには準備期間も必要で、地域のことを知ることも大切です。
そういう意味で、地域おこし協力隊はいろんな人とのつながりもできるので、自分自身が経験してみて、オススメです。
移住前からそういったつながりを少しずつでも築いておけると、移住後にもそれが活きると思うので、移住ツアーなどがあればぜひ参加されるのがいいと思います。
ーーーとても説得みのあるメッセージありがとうございます。今回はありがとうございました!
自然の中で働くということ
自然に囲まれた嶺北地域では、カヌーやSUPなどアウトドアガイドとして活躍される方がたくさんおられます。
加えて、自然環境を守るために必須であるのが「林業」という仕事。
林業が守っている「山」がないと、豊かな水資源も育むことができません。
近年のキャンプブームや、新型コロナウイルスの世界的蔓延による外国産材不足によって、日本の山にもようやく世間の関心が向いてきた昨今だからこそ、自然の中で働きたいと思う方が今後増えてくるだろうと思います。
そんな中で、立川真悟さんの生き方や働き方は、なにかそんな生き方をしたい人にヒントを与えてくれるものがあるなと感じています。
みんなにとって心地いい自然が、後世にも引き継がれることを願って。
立川真悟さんの想いや活動は「おいしんごがそれっぽく語ってみた」というブログで更新されていますので、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。
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